III Sides to Every Story / Extreme |
90年代は自分にとっては殆ど空白といっていい時代であり、それは単純に音楽から離れていたせいです。活躍した有名なバンドの名前ぐらいは知っていてもその中身は?となると全く、さっぱり、キッパリ、「無知」なのです。
エクストリームも例にもれず、ヌーノとかいう生意気そうな(単なる偏見です、すいません)ギタリストがいるバンド、ぐらいの認識しかありませんでした。なので、More Than Wordsを耳にした時、あ、コレ知ってる・・・と思えたことが意外でもあり、感動的(大げさ)でもありました。エクストリームってコレなのか・・・と。
しかし、More Than Words=Extremeという単純すぎる図式は、彼ら的にははなはだ迷惑な話なわけで、この曲は彼らの代表作でもある2ndアルバム「Pornograffitti」収録の美しいバラードで全米1位を記録しましたが、彼らのウリだったファンクメタル路線からは外れているし、いかにもイメージがひとり歩きしそうな曲(って具体的にどんな曲だよ)なので、おそらく様々な葛藤があったのではないか、と思われます。
そんな葛藤を経てリリースされたのがこの3rdアルバム「III Sides To Every Story」(1992年リリース)です。
ファンクメタルというジャンルは自分には馴染みがないせいか、聴くまでピンとこなかったのですが、「Pornograffitti」を聴いてみてああ、ナルホドな・・・と。ただ、個々の楽曲としてはいいと思えるものもいくつかありましたが、アルバム全体を通して聴くと、イマイチピンときませんでした。ぶっちゃけ、ファンクもメタルもそれほど自分好みの音ではない、ってことになるのでしょうけど。
そんな2ndと比較してみるとこの3rdは曲としてどうこう、というよりもアルバムとして聴かせるタイプの作品だと思います。それもそのはずで、「Yours」「Mine」「The Truth」という3部形式のいわゆるコンセプトアルバムとなっていて、それぞれ違うカラーの楽曲が配置されています。ざっくり分類してみると、「Yours」は前作のファンクメタル路線、「Mine」は内省的な聴かせるタイプの楽曲が並び、「The Truth」は3つのパートに分かれた20分以上にも及ぶ組曲形式で、ひたすら壮大。プログレ的でもあります。
自分的には「Mine」が好きですが、「Yours」もカッコイイ。「The Truth」はちょっと長すぎて退屈、というか全体の収録時間がとても長いので、最後の方は息切れしてしまうのですが、それでも聴き通すと何やらささやかな充実感が得られる、というちょっと不思議な感覚のアルバムです。内容は平和、戦争、死、家族、愛、神、世界、と人間を取り巻くあらゆる事象について、といっていいでしょう。曲毎にゲイリーの丁寧な解説が入っていますが、かなり練られた渾身の作、といっていいのではないでしょうか。
「Yours」はそうでもないんですが、「Mine」「The Truth」と進むにつれ、クィーンを思い出してしまいました。そういえば、エクストリームのフレディ・マーキュリー追悼コンサートの出来栄えは凄まじかったようですね。私も最近YouTubeで観ましたが、ボーカルのゲイリー・シェローンにはフレディが乗り移ってるんじゃないか、と思っちゃう位、マジ度肝を抜かされました。やっぱりクィーンの影響は相当受けているのでしょう。
すぐにビビーンとくるようなタイプの音ではありませんが(自分的には)何か引っかかりを感じる、というか今すぐにではなくても、何ヶ月先かあるいは何年先かにはすごく好きになっているかもしれない・・・そんなほのかな予感がする作品といえそうです。
III Sides to Every Story / Extreme
YOURS
1. Warheads
2. Rest In Peace
3. Politicalamity
4. Color Me Blind
5. Cupid's Dead
6. Peacemaker Die
MINE
7. Seven Sundays
8. Tragic Comic
9. Our Father
10. Stop The World
11. God Isn't Dead?
THE TRUTH
12. Everything Under The Sun: I. Rise 'N Shine
13. Everything Under The Sun: II. Am I Ever Gonna Change
14. Everything Under The Sun: III. Who Cares?
>当時は本格的なオーケストラとの共演というウワサがあったので、ファンからはがっかりされたらしいですけど
前作のような音を期待したファンにしてみれば、オーケストラというのはちょっと受け入れ難かったのかもしれないですね。
でも新しいファンを開拓できたのだろうな、とも思います。
凄いと思えるのは3つの側面をキッチリと分けて(作り込んで)表現していることです。
前作の成功なんてどうでもいいかのような(?)潔い変身ぶりが気持ちいいです(笑)
変身といえば、これの次作もまた違った作風で、私的には結構ツボだったりします。
エクストリーム、なかなか奥が深いです。