不思議の壁(Wonderwall Music)/ George Harrison |
「不思議の壁」といえば1968年のジェーン・バーキン主演、ジョー・マソット監督によるサイケデリックムービー。(ちなみにこの監督さん、後にレッド・ツェッペリンの「狂熱のライブ」を撮った方だそうです)当時のフラワームーブメント、ドラッグカルチャー、といったニオイがプンプンの映画で、私は観たことはありませんが、「マジカルミステリーツアー」をよりシュールに、カルトにかき回したようなかんじかしらん・・・なんて勝手に想像してます。
まぁ、これは要はそれのサウンドトラックというわけなのですが、4,5年前に購入するまで、このアルバムは聴いたことがありませんでした。ジョージがビートルズ時代にリリースした初のソロアルバムで、アップルレーベルからの第1弾作品ということで、もちろんその存在は知っていましたが、ジョージものとはいえ所詮サントラでしょ・・・とあまり気持ちも動かなかったのです。中古で「電子音楽の世界」と一緒にこれを見つけ、そういえば持ってなかったなー、何で持ってなかったんだろ、廃盤になっちゃうのも困るし、買っといた方がいいんだろうな・・・と、聴きたいというよりも持ってなきゃ、的なヘンな義務感(?)に襲われ購入したのでした。(「電子音楽の世界」も一緒に)
しかし一回聴いただけで、聴き込もうという気にはなれませんでした。「電子音楽」と比べたらこちらの方がダントツに聴き易くはありましたが、やっぱり歌入りの方がいいよー、退屈だよー、眠くなるよー、と早々と挫折(笑)。
それをなぜまた聴く気になったのかはわかりません。ジョージが夢の中で、ま、コレも聴いてみてよ。悪くないぜ・・・と甘く囁いた(笑)、ということにしておきます。(ウソだけど)
一聴しただけでは退屈な印象が先に来ますが、何回か聴くうちに、以外とバラエティーに富んでいるじゃないの、ということがわかります。それはインドのボンベイでの録音(現地のミュージシャンによるもの)とロンドンでの録音(レモ・フォーというマージー・ビート系のインストゥルメンタルバンドによるもの)が混在していることが要因のひとつでしょう。東洋と西洋がうまく混在しているということでしょうか。おまけに(8)"Ski-ing"ではクラプトンとリンゴが参加していて、ピリリと引き締まったセッションを聴かせてくれてます。ジョージはプロデュースに徹しているため、彼の演奏が殆ど聴けない(一部シタールとピアノだけのよう)のは残念ではありますが、この作品ができた1967~68年にかけての背景(サイケデリックやドラッグカルチャー。ビートルズ作品は「サージャント」「マジカル」「ホワイトアルバム」「イエローサブマリン」)を思うとなかなかに感慨深いものがあります。この時のインドでの録音のストックの中から後に"The Inner Light"へと発展していった、なんていう話は感動的(?)ですらあります。
この頃のジョージの創作意欲はハンパなく旺盛だったことでしょう。ビートルズ作品の中ではLP1枚中枠は2曲しかもらえなかったということで、どんどんたまっていく自分の曲を発表したい、という思いは日に日に強くなっていたはずです。本作は書きためておいたというよりは映画のサントラ用として、フィルムを見ながら新たに書いたものばかりだとは思いますが、作曲家としてのジョージの才能って、もっと注目されてもよかったんじゃないか、と感じます。まぁ、所詮サントラなので映画がもっと評価されるなり、ヒットするなりしていたら少しは違ったのかもしれませんが・・・。
時代を感じます。そしてその”時代感”がまた、心地いい(笑)。1967-68年にタイムスリップしてみたくなります。
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聴き行っています、
ジョージの深さを感じます。
ありがとうございました。また記事読ませて頂きます。