Pacific Ocean Blue (Legacy Edition)/Dennis Wilson |
ビーチボーイズ内でのデニスのポジションというのは、どうしてもイメージ的なものが先行されがちだと思う。メンバーで唯一のサーファーで、サーフィンの歌を作ったらどうか、とリーダー(兄のブライアン)に提案したのが彼である、という話は有名だろう。音楽よりも、サーフィンと女の子に青春を捧げていた彼だが、音楽一家に育った兄弟たちは当たり前のようにバンドを組み、デニスは成り行き上、なんとなく空いていたドラムをやらされる羽目になる。
スタートはそんなだったこともあり、デニスに音楽的な才能とか力量とかを期待する者はいなかったと言ってよい。その代わりといっちゃナンだが、メンバー中一番イケメンだったため、初期のアイドル的な人気はデニスによってもたらされた。
しかし、そこはさすがにウィルソン家の血筋ということだろうか。デニスは60年代後半からじわりじわりとその才能を発揮し始める。
メンバーの中で一番最初にソロ作を出したのがデニスだった、というのは意外なようでもあり、当時の状況を考えると、すんなり納得できるようでもあり・・・というところか。
まださらりとしか聴いていないのだが、冒頭のRiver Songは一回目からすーっと入ってきた。こういう壮大さはいかにもデニスらしいなぁ、と思う。どの曲も直球ストレートというか、やっぱりこの人は真っ直ぐで自分に正直な人だったんだな・・・。
ライナーにデニスがキーボードを弾く姿が最初は新鮮で意外だった、みたいなことが書いてあったのだが、私も全く同じで、Help Me Rhondaでノリノリのピアノを披露しているデニスの映像を初めて見た時、この人はドラマーなはずなのに、こんなに上手にピアノも弾けてしまうんだ、ということが驚きだったし、やっぱりタダモノではないんだなぁ・・・と感心したことを覚えている。その時、曲の始まる前のMCで自ら「エルトン・ジョンもビックリ!」と言っていたので、エルトン・ジョンもぶっ飛ぶノリノリのピアノをこれから弾いてやるぜ!という意味だったのだろう。
結局デニスは2ndアルバム「バンブー」を完成させることなく、この世を去ってしまった。
このアルバムをじっくり聴けば、彼が駆け抜けた人生の片鱗を垣間見ることができるような気がする。このアルバムこそがデニス・ウィルソンなのかもしれない。それくらいにストレートである。もっとも小賢しい変化球なんて、彼には絶対に似合わないけど。