When In Rome 2007/Genesis <DVD> |
ライヴDVDなのに字幕にこだわるのはボーナスディスクとしてドキュメンタリー映像が付いているからだ。結果、やっぱり字幕ナシではお話にならないくらいに、ドキュメンタリーの字幕は重要でした。言葉の理解の重要性を今更ながらに実感したしだいである。
本編2枚とドキュメンタリー1枚とで合計5時間にも及ぶ大層なボリュームだが、ダレた所は全くない。正直ここまで素晴らしいとは思わなかった。
何が良かったかって・・・うーん、一言で言うなら「現役感」だろうか。もちろんリハーサルもみっちりやったに違いないが(そのへんの苦労はエクストラ映像でたっぷりと窺い知ることができる)さすがだよ!すごいよ!と思えるキャリア、あるいはプライドといったものが全編に渡って感じられ、この満足度の高さの要因はやっぱりつきつめていくと、端々から伝わってくる「現役感」にあるのだろうなぁ、と思う。
このDVDはヨーロッパツアー最終日、フリーコンサートとなったローマ公演を収めたもので50万人もの集客があったという。人の多さは正に圧巻といったところ。集客もすごいがステージセットもモノモノしい。やっぱりなぁー、金かかってんだなー、超一流ってことだよなぁー・・・などと当たり前っちゃ当たり前のことに改めて気付かされる。
面白いと思ったのは、曲ごとに始まる前に画面左上に記号が出てくるのだが、それが出ている間にリモコンのボタンを押すとエクストラ映像を小出しに挿入できること。その曲の打ち合わせやキー合わせの光景などを垣間見れて、あー、これは良いぞ・・・と。
個人的なツボはdisc 1ではまずなんたってIn The Cageメドレー。Chinema Showから耳慣れたSlippermanではなく、Duke's Travelに繋がるところがちょっと斬新。後はお馴染みのI Know What I Likeも嬉しい限り。フィルのタンバリンさばきもスクリーンに映し出される30年前のものほど軽快とはいかないものの、なかなかのもの。disc 2ではなんたってRipplesが嬉しい!エクストラ映像ではラフなアコギバージョンが聴けるのだが、これがまた堪らない!それからお約束のLos EndosとアンコールラストのCarpet Crawlersにもぐっとくる。なんだかんだでやっぱり古い曲ばかりが御贔屓となってしまうわけなのですが(笑)、耳慣れない80年代後半以降の曲にもさほど抵抗は感じなかった。
本編に加えてドキュメンタリーのdisc 3がまたいい。
メンバーのみならず、ツアーの初日に至るまでのスタッフの苦労苦悩も垣間見れて、なかなか興味深かった。とりわけプログラムの進行を一手に託された「ボタン押し係」の苦労やステージでは楽器に化ける(笑)フィルのお眼鏡にかなう「スツール」を求めて東奔西走するスタッフには心から御苦労さまです、と言いたい。ツアーをきちんと成功させるってことは並大抵じゃないんだ・・・ということを思い知らされた。
全体を通じて印象に残ったのはフィルが「もう少し自分に自信が持てれば・・・」みたいなことを言っていたこと。
フィル・コリンズともあろう人らしからぬ言葉のようにも思えるが、フィルにとっては15年ぶりのジェネシスということで、プレッシャーも人一倍だったのかもしれない。Carpet Crawlersでは2時間歌った後で高音が出せるだろうか、としきりに心配していたし。演奏面では少しやればカンが取り戻せそうだが、声がちゃんと出るか、というボーカリストとしてのプレッシャーは結構大きかったのではないだろうか。
数か月前に音楽業界から退くことを明言したフィルだが、楽しくもありキツくもあったツアーをやり終えて、心情的にもうしばらくは何もしたくない、表に出たくない・・・という方向に向かってしまうのは、このドキュメンタリーを見ていてよくわかる気がした。
とはいえ、これでジェネシスは終わっちゃったのか、もうおしまいなのか・・・と思うと、やっぱり残念で仕方がない。
このDVDは何度も何度も、繰り返し見ることになりそうだ・・・うん。